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稚拙な表現ではありますが、旅行記などを発表していきたいと思います。
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中国大陸をほっつき歩いた旅記録です。
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アジアぶらぶら顛末記
アジアぶらぶら顛末記 ラオス編

 その3【ビエンチャンでエンジョイエンジョイ!】

 当時のラオスは普通のビザではビエンチャンしか行けなかった。もしもルアンパバーンやパークセーなどの地方都市へ行くなら、旅行代理店に高いパーミッションを払わなければならないという噂を聞いていた。本当にそうなのか。確かめたくてビエンチャン市内の旅行代理店に「たのもう~!」と意気込んで入っていった私である。

「はい、2500バーツ払ってくださいよ。じゃないとルアンパバーンには行かせないからねー。」

 噂通りの答えが代理店社員の口から発せられた。えー、そんなにするのぉ?ちょっと負けてよ~。

「いいえ、これは決まっているのです。行きたければ2500バーツ耳をそろえて払いなはれ!」

 ちぇっ、少しくらい負けてくれたっていいのに。2500バーツは日本円に換算すると1万円強(当時のレートで)なのだが、この頃の私は現地採用で中国の大学に勤める貧乏旅行者。2500バーツは大金であった。意地悪なビエンチャンの旅行代理店め。ケチ!ケチ!あっかんべぇーだ。悪態をつく私を代理店の社員達は面白がって見ている。

「まあ、まあ、まあ、そんなに怒らないで。ほ~らほら、これあげるから。」

 女性社員がなだめるように私の目の前にさっと何かを差し出した。卵だった。

「食べてごらん。おいしいよ。」

 食べ物に弱い私は態度を改め、卵を手に取った。ゆで玉子だな。

「こうやって食べるのよ。」

 女性社員が小さなスプーンでゆで玉子の頭の部分をコンコンと叩いた。叩いた部分はすぐにひびが入り、彼女は丁寧にその部分の殻を丸く取り去ってくれた。そしてスプーンを私に持たせ、

「はい、どうぞ食べてみて。」

と、笑顔を向ける。言われた通りスプーンですくって食べてみる。うん、普通のゆで玉子と同じだ。続けてすくっていくと、あれっ、黄身の部分から何かふわふわしたものが出ているじゃないの。これ何だ?おっと、口の中に入っている卵にも何かふわふわしたものを感じるんだけど、これってもしかしたらもしかして、ひよこちゃんの羽根ー!?私の複雑そうな顔の表情を見て代理店社員一同どっと笑った。いやだ~!この玉子、噂には聞いていたけど東南アジアで食べられている“孵化寸前のニワトリの玉子を茹でたもの”だったのだ。ひえ~、なんて残酷なものを食っちまったんだー。ひよこが可哀想だー。いやだ、骨の部分とかくちばしの部分とかはっきりわかるじゃないの、気色悪う~。大騒ぎする私を取り巻き、社員達は大いに笑った。

「ノープロブレム、ノープロブレム!」
「グッド プロテイン!」
「エンジョイエンジョイ!」

 何がグッドプロテインだ!黙ってこんなもん食べさせるなんてひどいじゃないか!・・・・・あ、あれ、だけど味はおいしいよね、確かに。普通のゆで玉子よりもコクがあるような。

 結局ゆで玉子1個食べきってしまった。これに気をよくしたのか、社員達はオフィスの外にテーブルを運び出し、どこからともなく串焼きを何本か持って来た。更にビールまで登場し、さあみんなでブレイクタイムといきましょう~という展開になった。こらこら仕事中なのに、いいのかあんたら!!私の心配などよそに社員達は串焼きをパクパク食べている。ビールをがぶがぶ飲んでいる。私も串焼きを1本握らされ、いつの間にか目の前にビールのジョッキも置いてあった。もぉ~、昼間っからいいのかなぁ。ビールの泡を見つめたままためらっていると、

「エンジョイエンジョ~イ!」

社員達は愉快そうに笑う。ったく、しょうがないねぇ。こうなりゃ全員同罪だ。飲んでやる!!私もジョッキをあおり、串焼きに噛みついた。後であんた達のボスに叱られてもわたしゃ知らんよ。

ブレイクタイムも終わりホテルへ帰ろうとしたら、社員の一人が変な目配せをしてきた。

「ねえ、今夜一緒にディスコに行かない?」

 いやだね。なんでラオスに来てわざわざディスコなんかに行かなきゃならんのだ。

「みんな行くんだよ。だからどう?」

 みんなって社員みんな?目配せした男性社員はそうそうと頷いた。うーむ、このメンバーと一緒ならエンジョイできそうかも。旅の色気にちらりと誘われ、その夜ビエンチャンのディスコに出かけてしまった私だった。

 ところがだ。みんな一緒だと言っていたのに、来ていたのは目配せ野郎だけだった。このぉー、騙したな!!嘘つきめ!不愉快だ、私は帰る。憤然とテーブルを立ったのだが、目配せ野郎が制止した。

「少しだけつきあってよ。僕、こういう所来たかったんだ。」

 ふーん、なるほど。その為につきあわせたってわけか。だけど私じゃなくても他の人を誘えばいいじゃないか。ほら、同じ会社の女の子とか。

「だめだめ、興味ないって言うんだ。えーっと、何かお酒飲む?」

 いらんよ、アルコールなんか!ジュースください、ジュース!私のむっとした表情に目配せ野郎はおとなしく従いオレンジジュースを持って来てくれた。

 ディスコは想像していた通りこぢんまりとした造りだった。薄暗い店内にピカピカした飾りがついていてミラーボールも一つ回っていたが、急ごしらえというか取って付けたというか、四角い部屋を無理矢理お店にしたような感は否めなかった。踊る場所もステージではなく空いているフロアだ。それも広くはない。今、このフロアで踊っている人はたった2,3人。派手な西洋音楽がかかってはいるが、ディスコと呼ぶには寂しい。

「ねえ、踊ろうよ~。」

 目配せ野郎がしきりに誘う。えー、こんなシケたディスコでかい?しかもほとんど誰も踊っていない状態のフロアでなんか目立って恥ずかしいじゃないか!
 踊ろうよ、イヤだ、踊ろうってば、イヤだイヤだ、と繰り返されるのみの我々の会話。ああ~、何が悲しくてビエンチャンの場末のディスコでフィーバーしなきゃならんのだ!ノーサンキューよ、ノーサンキュー!!そう言ったときだった。
 ディスコ音楽がパタリとやんだ。ダンスタイム終了かと思ったら

   ツンタタ、ツンタ・・・ツンタタ、ツンタ・・・ツンタタ、ツンタ・・・

 軽快ながらも優雅なテンポの音楽が流れてきた。東南アジア風のメロディーだ。

「モーラムだよ。」

 目配せが嬉しそうに叫んだ。

「踊ろうよ。簡単なんだ、教えてあげる。」

と、フロアを指さした。へ?モーラム?ラオスの音楽なのね。こういうのだったらやってみるのもいい。目配せ野郎についてフロアに進み出ると、他のギャラリーも何人か集まってきて輪になった。なんだかフォークダンスみたいだな。目配せの動作を真似て踊ってみる。動きはフラダンスと盆踊りを足して2で割ったような感じだが、単純な動作でややゆっくり目だから覚えやすい。上手に踊ったらなかなかエレガントじゃないか!これはおもしろい。ありふれたディスコよりずっといいぞ。

 というわけで、ディスコ音楽になったらテーブルに戻り、モーラムになったらフロアに出て踊る、というのを何回か繰り返した。すっかりモーラムダンスのとりこになってしまい、もの悲しく感じたディスコでもずいぶんエンジョイできたビエンチャンの夜であった。

 モーラムを存分に楽しんだ後、目配せ野郎のバイクでホテルまで送ってもらった。どうもコープチャイ(ありがとう)、あんたのお陰でモーラムを知ることができた。

 考えてみたら旅行代理店の人達には、えらくお世話になったのだった。パーミッションを払うという規定になっているのに、いちゃもんをつけた私に親切にしてくれた。ゆで玉子や、串焼き、ビールをご馳走になり、目配せした兄ちゃんからはモーラムを習った。今日一日ビエンチャンをエンジョイできたんだから感謝しなくちゃいけない。なのに私は態度が悪かった。反省だ。反省しつつもホテルの部屋でエンジョイエンジョイ~と叫ぶのだった。


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