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中国大陸をほっつき歩いた旅記録です。
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アジアぶらぶら顛末記
アジアぶらぶら顛末記  タイ編

その1【ゲーレオで悪かったわね】

 初めて降り立ったバンコクの町は真夜中だった。夜更けて尚賑わえるホアランポーン駅界隈に一人放り出された私は、地図を片手にうろうろ歩き回っていた。地理オンチが夜中に彷徨うとろくなことがないもんで、今いったい自分がどこを歩いているかさえもわからなくなる始末。暑いわ、焦るわ、怖いわで、体中から汗が噴き出す。あまりにも情けない哀れな様子だったんだろう、とうとうお巡りさんに拾われた。

「どこに行くんですか。」

 お巡りさんは心配そうに尋ねてくれた。スリクルンホテルに行きたいと言うと、先に立って案内してくれた。が、なんと、ホテルはすぐ目の前にあったではないか。なんでわからなかったんだろ。

「夜は特に気をつけてくださいね。」

 お巡りさんはにっこり笑うと去って行った。ああ、かたじけなや。親切なお巡りさん、どうもコープクンカッ!!

 ホテルのカウンターでは従業員さんがニコニコしながら迎えてくれた。チェックインもすんなりいき、部屋に水を持ってきてくれたルームサービスボーイの笑顔も爽やかだった。お巡りさんといいホテルの人といい、タイではみんなスマイルじゃん!中国と全然違うなあ。旅人の多くが『タイいいよー』って言っていたのが初日にしてわかった気がした。

 買い物をしても道を聞いてもタイの人はおおむね親切だ。ぶっきらぼうに“没有(メイヨー)”なんて言わず、申し訳なさそうに“マイミー(ありません)”と言う。うーん、やっぱりタイって素敵だ、やっぱり中国って最低だ、とタイのポイントが何点もアップしていく。旅行会社のパンフレットにも“微笑みの国タイへようこそ”なんて文字が躍っていたが、あれは何も大袈裟な表現ではなく真理であったのだな。私は深く納得し、嬉しくなったのだった。

 スリクルンホテルがやや割高なので、三日目から日本人が多く泊まっているというジュライホテルへ引っ越した。ここで日本人からバンコクの情報をいろいろ仕入れて動くのもいいなと思ったのだが、日本人客らしき姿は見当たらなかった。ま、いいや、こんな時は従業員さんに遊んでもらおう。フロントで暇そうにしているスタッフはこれまた笑顔のいい明るい兄ちゃん達。気さくにタイ語を教えてくれたりして、楽しくおしゃべりできた。だが、話しているうちにわかった事実。

「本当のこと言うと、僕たちは日本人がキライなんだ。」

 えーっ、そうなの!面と向かってそう言われるとショックじゃあーりませんか。だけどキライな日本人ともこうやってニコニコ笑顔で接しているってわけ?何故キライなのかと恐る恐る聞く。

「だって変だよ、日本人って。夕方起きてきて、酒飲んで、女買って、朝になったら寝るんだよ。観光なんて何もしない。何しに来てるんだか。」

 な~るほど。ここに泊まっている連中って、ただダラダラ溜まってる野郎ばかりなんだ!だから昼間に顔あわせないのね。ほんと、何やってんだか。けどね、彼らと私は別もんだ。せっかく来たんだもん、バンコクをいろいろ見て回りたい。不健全な奴らと一緒にしないでね。
 
 さて、再び観光に出かけるとするか。身支度を調えるためいったん部屋に戻ろう。階段を駆け上がり、ふと踊り場に目をやると、小さい黒板が立てかけてあるのに気づいた。あれ、こんな所に黒板なんてあったっけ。見ると黒板には細かく線が引いてあり、上の方に番号が書いてあった。どうやら部屋番号のようだ。その下には“日本人”と漢字で書かれている。どの部屋番号の下にも“日本人”の文字。まあ、ここには日本人しか泊まってないのか!で、私の部屋番号のところは・・・・・わああああっ、なんと“異人”と書いてあるではないか!何が異人だ!勝手に書くな!怒りが込み上げてきて、「異」という字を消し、「美」と書き直した。ふん、ざまぁみろいっ!

 美人は観光ついでに駅へ行き、ノーンカイ行きの切符を予約した。中国以外の国で列車に乗るのは初めて。しかも寝台車なんてワクワクしちゃうな。だが、切符を買うときは緊張した。なぜならタイ人は表向きにはニコニコしていても、ジュライホテルの兄ちゃんが言っていたように日本人が気に入らないかもしれないもんね。ウケをよくしようとチケットカウンターで思い切り愛想よくしたが、

「ノーンカイまでね、あさってのぶんでいいんですね。一人?一人で大丈夫?」

と、カウンターのおじさんにすっかり心配されてしまったのだった。

 寝台車に乗ったはずなのだが、座席は普通のものと何ら変わりなかった。JRの新快速のように向かい合わせになった座席があるばかり。なんで?(後でわかったのだが、寝る時間帯になったら列車員さんがやってきて、ガチャンガチャンと座席をベッドに組み替えてくれるのだった)とにかくチケットに書いてある番号のところに座り、初めてのタイ列車の旅に胸躍らせた。出発間際、私の向かい側に一人の男が座った。年の頃30過ぎの痩せ形、眼鏡をかけていて短髪、白いカッターシャツにスラックスというラフな格好の兄さんだった。彼は何やら話しかけてきたが、タイ語でぺらぺらやられたんじゃ当然こっちはわからない。それで、習ったばかりのフレーズを初めて使ってみた。

「ディーチャン ベン コンジープン (私は日本人です)。」

 すると兄さんは“おおおおおぉ~”と派手に驚き、

「ジャパニーズ?」

と英語で確認した。が、英語はほとんどできない様子。私の英語も自分の身長と同じくらい低いレベルなもんで、相手の英語力をどうこう言える立場ではない。ううむ、しょうがない、この兄さんと向かい合わせになった以上、ちっとは愛想よくしてやるか。ジュライホテルのお兄さん達から習ったタイ語を書き留めたメモ帳を取り出し、“私はノーンカイへ行きます”とか、“あなたはどこへ行きますか”などタイ語で話してみて、通じたらほほ~、やったあ~、と手をたたき、兄さんを喜ばせた。(仕方なく喜んでくれたのかもしれないが)

 そして兄さんの方も私に聞いた。

「クン アー ユー タウライ カ ?(あんた何歳なの?)」

 急いでメモ帳をめくり、数字を書き込んだページを探しあて、

「えーっと、えー、イースィップ ガウ(29)!」

と答えた。(当時私は29歳だった。)すると兄さんは

「イースィップ ガウ・・・イースィップ ガウ・・・・・」

と小声で繰り返し、やがて黙り込んでしまった。あれ、通じなかったのかな。私の発音が悪かったのかな?と、突然兄さんは大声で言った。

「オールド!!」

な、な、なに~!?一瞬二人の間に沈黙が流れた。が、次の瞬間お互い大笑いしてしまった。まったくもぉ、兄さん!何考えているのかと思ったら『年増』と言いたいがために、その英単語を思い出してたのね。背が低くて童顔の私はよく若く見られるが、きっと彼も29には見えないネと言おうとしたんだろう。ほんまに、大きなお世話だ。

 ところで『old』ってタイ語ではなんと言うのか。兄さんによると『ゲーレオ』と言うのだそうだ。日本語の『年増』って手遅れだというレッテルを貼ったような、どうしようもなく毒を含んだ言葉だが、英語の『old』もどことなく陰鬱な響きがあってイヤだ。が、『ゲーレオ』はその上を行く。‘ゲー’と低く発音して、その後すかさず‘レオッ’と上がるのだが、その軽く上がるのがいかにも人を小馬鹿にしたように聞こえるのだ。‘ゲー’ときて‘レオ’とはひどい、ひどすぎる。しかし、兄さんから見たら私は『ゲーレオ』なのだ。ふんっ、『ゲーレオ』で悪かったわねぇ!ま、その後兄さんにオレンジジュースをごちそうしてもらったので、今回は勘弁してあげたけどね。

 兄さんは途中で降り、話し相手がいなくなった。私は黙って列車の揺れに身を任せながらこれからの旅に思いを巡らせドキドキしていた。タイって本当に素敵な微笑みの国。だけどスマイルしつつも結構ズバズバ言ってくれるじゃないのよ。なかなか手応えのある人々じゃない!今後の展開がとっても楽しみだ。私は心の中で指をポキポキ鳴らしたのであった。 



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テーマ:エッセイ - ジャンル:小説・文学


この記事に対するコメント
タイ人、日本人をあまり見たことなくてきっと、年の若い可愛い子!と思ったのでしょうね。で実際年聞いてみると思ったより年だったので思わずゲーレオだったのでしょ。でもそこら辺、素直で可愛いタイ人ですね。
【2007/04/12 06:36】 URL | はのまん #sSHoJftA [ 編集]

色付きの文字
ハノマンさん、コメントありがとうございます。
タイの旅も本当におもしろかったです。
思いがけないことの連続で、刺激的でした。
【2007/04/13 00:00】 URL | しゃんるうミホ #- [ 編集]

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